平成28年3月17日(木)夕刊フジ【伝統と創造】看過できない国連女子差別撤廃委員会の認識 皇室典範への言及は不当極まりない

国連女子差別撤廃委員会が7日に発表した最終見解は、日韓合意を「被害者を中心に据えたアプローチを採用していない」などと批判し、元慰安婦への金銭賠償や公式謝罪を含む「完全かつ効果的な賠償」を求めた。

これは、日本の見解とはまったく相いれないものである。日本政府は今回、杉山晋輔外務審議官を派遣して、同委からの質問に答え、初めて「強制連行」「20万人」「性奴隷」は事実に反すると反論した。遅きに失したとはいえ、政府が初めて慰安婦問題の虚偽について事実に基づいた反論をしたことは大きな意義がある。ところが、同委はまったくこの日本の主張を踏まえず、世界が前向きに評価している日韓合意による「最終的かつ不可逆的解決」にも逆行する見解を出したことは看過できない。

さらに、11日、国連のザイド・フセイン人権高等弁務官が国連人権理事会での演説で、慰安婦について「先の大戦で日本軍による性奴隷制度を生き延びた人々」と述べたことは、いかに慰安婦に対して誤った認識が国際社会に蔓延(まんえん)しているかを示すものであり、暗澹(あんたん)たる思いだ。

四半世紀にわたって慰安婦についての誤った認識が世界に広がることに対し、日本政府が事なかれ主義で不作為に終始してきたなれの果てが今の憂慮すべき状況であるから、同様の年数をかけて虚偽を正していかなければならないことを覚悟すべきだ。

今回の国連見解で、驚愕(きょうがく)すべき見解が出される寸前で削除された。当初準備されていた見解では、皇室典範を「差別的規定」と決めつけ、「皇室典範を女系女子の皇族にも承継が可能となるよう皇室典範を改正すべき」とされていたのだ。

まず、今回の女子差別撤廃委員会において、皇室典範は議論の対象にすらなっていなかった。最終見解案の段階で突如、不意打ち的に出てきた。これは、わが国の反論権を全く無視した民主主義の手続きに違反した不当極まりないやり方だ。

さらに、その内容もわが国の2000年以上の歴史と伝統の上に不文法の時代から定められ、受け継がれてきた皇室のあり方という国柄そのものに直結する事項であり、男女平等や差別という問題とは次元を異にする。なぜこのような見解が示されようとしたのか、国連の手続きの問題点も含め、党の特命委員会で検証することにした。

最後に私事であるが、週刊誌を名誉毀損で訴えていた裁判が大阪地裁で棄却された。私についての「在特会(在日特権を許さない市民の会)と近い距離が際立つ」という表現は私の社会的名誉を毀損するが、それは「事実を摘示」したのではなく、「論評」だから違法性がないというのだ。私は在特会と何の関係もなく、接触したこともされたこともない。「近い距離」という表現は「何らかの関係がある」という「事実」を含む表現であり、このような悪意に基づく虚偽を許すことはできず、控訴審で争うつもりだ。

(自民党政調会長・稲田朋美)